Blog

誰とでも・どんな言い方でも 応えられる「理想のチャットボット」を


今回はチャットボット事業を展開するAIメッセンジャーのデータサイエンティスト、友松さんにお話を伺いました。

―まず、サイバーエージェントへ入社した経緯を教えてください

※写真はインターン優勝時のもの

※写真はインターン優勝時のもの

僕は2018年に新卒入社なのですが、サイバーエージェントとの最初の接点は2015年の研究室配属後の学部4年次に、サイバーエージェントと明治大学の共同研究が始まったことがきっかけです。共同研究にはその後2年間携わり、その中で広告文生成、広告配信アルゴリズム、ブランドリフトに関する研究を行いました。当時、研究を進めていく中でサイバーエージェントが行なっている研究テーマの面白さに惹かれるのと同時に、共同研究に関わっていた社員の能力の高さや、研究を進めていくスピード感に憧れました。修士1年の時には、広告の配信システムと配信アルゴリズムを実装する3日間のインターンに参加して優勝し、その後内定となり、入社を決めました。

―学生時代の専門領域はどのような内容だったのでしょうか?

大学時代はマーケティング課題に対して機械学習や強化学習を適用する応用研究を幅広く行なってきました。
学部4年から2年間はサイバーエージェントとの共同研究で文書生成・推薦システムなどを取り扱い、また、修士2年の時には深層強化学習を用いた店舗推薦をテーマに10名ほどの大規模プロジェクトで研究を行っていました。

―現在はAIメッセンジャーに所属しチャットボット事業にて開発に取組まれていますが、学生時代は自然言語処理とどのような関わりがあったのでしょうか。

学生時代は自然言語処理を専門でやっていたわけではなく、マーケティング課題の解決手段としての自然言語処理を行なっていました。
研究の一例としてユーザーの嗜好に合わせたテキスト広告文の自動生成を行なっていました。例えば、旅館の広告文において、「温泉」を好むユーザーに対しては「源泉掛け流しの温泉」のような言葉を、「料理」を好むユーザーに対しては「岩魚のお造り」のような言葉を広告文に入れることによって、同じ旅館の広告文でもユーザーによって広告文の内容を変えるような研究です。その後、2017年の7月からAIメッセンジャーで内定者バイトをはじめ、そこから初めてチャットボットの研究に携わり、現在に至ります。

―それでは現在の業務を教えてください。

大きく分けて「データビジュアライゼーション」と「チャットボットのロジック開発」を担当しています。
まず、データ可視化に関してはTableauというBIツールを用いて行います。チャットボットの応答数や応答内容による解決率などのKPI、チャットセンターのKPIなどの可視化、チャットボットが答えられていない質問のグルーピングの可視化などを行います。
ロジック開発では、現状ロジックの精度向上と新規ロジックの開発に取り組んでいます。現状ロジックの精度向上では特徴量の変更や溜まったデータによる追加学習、モデルの変更に取り組んでいます。新規ロジック開発では、東北大学の乾教授に助言をいただきながら既存のロジックとは異なる新しいチャットボットの仕組み・ロジックの研究開発を行っています。

―チャットボットの事業に取り組む上で、面白いところを教えてください。

面白いところの1つ目としては、提供するサービスによってユーザー属性や質問の仕方の傾向が変わったり、同じサービス内でもユーザーによって様々な質問の仕方をする点があります。例えば、若年層が多い場合・女性が多い多い場合にも異なりますし、更に時間帯でユーザー層が変化する場合もあります。また短文で質問するユーザー、長文で複数の質問を同時にするユーザーもいます。インターネットリテラシーやロイヤリティも様々であるため、質問の仕方が変わります。2点目は、フィードバックの存在です。チャットボットに反応する/しないや与えた選択肢のどの項目を選択するかと行った暗黙的なフィードバックに加えて、直接アンケートを行い「課題が解決したかどうか」といった明示的なフィードバックが得られます。学生時代に多く関わってきた広告のフィードバックとは特性の違うフィードバックを扱える点が面白いです。

―反対に、大変なところはありますか?

大変なところとしては、サービスとして提供している以上、破綻しそうなモデルは組めないという点があります。AIメッセンジャーには「AIコミュニケーションデザイングループ」というチャットボットの設計の専門チームがあります。まず、チャットボット導入前に利用していたお問い合わせのデータ(メールの問い合わせなど)をクライアントから提供していただき、機械学習によってどんな質問が多いのかをグルーピングする作業を行います。その結果をもとに、このグループはチャットボットに入れるべきか入れないべきかを判断して、チャットボットに組み込む場合にはどのように組み込むのがいいのかを設計してから初めて、チャットボットの回答候補に組み込みます。この初期設計は重要な箇所であるとともに時間がかかる箇所でもあります。ここをいかに効率的に高品質のものを作れるかというのはAIメッセンジャーの事業課題の一つであり、それをいかに解決できるかという点はデータサイエンティストとしても面白い課題です。

―最後に、今後取り組みたいことを教えてください。

AIメッセンジャーでは「理想のチャットボット」を定義していて、それにを実現するために、東北大学の乾教授から助言をもらいながら、研究開発を行なってます。
理想のチャットボットの実現のための、AIメッセンジャーの強みの一つとして、チャットセンターを自社で保有している点があります。これは「人」 対「 チャットボット」のデータだけでなく、「人」 対「 人」の会話テキストのデータを取得できるということです。もう一つの強みとして、チャットボットの設計を行う専門チームがいるので、AIロジックを生かした設計・運用を行うことが可能にしています。このようなデータや体制を活かして数多く溢れるチャットボットの競合の中でAIメッセンジャーしかできない仕組み/ロジック開発を行なっていきたいと思っています。

友松さん、ありがとうございました。