Interview

研究を社会実装することに魅力 ロボットを使って対面コミュニケーションを進化させたい

岩本 拓也 / AI Lab

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Interviewee

岩本 拓也

AI Lab

大学院進学時から現在も続けている”HCI領域における対面コミュニケーション拡張”をテーマに複数の研究を行っている。卒業後も民間企業の研究所に所属しながらHCI領域の研究を続け、論文を執筆。より大きな実験を行い社会的インパクトが強いプロジェクトを進めたくなりサイバーエージェントに転職

今回は現在ロボットサービス事業部に所属してHCI(Human Comuputer Interaction)の研究・開発を担当する岩本拓也さんへのインタビューです。
ロボットサービス事業部はサイバーエージェントのロボット関連サービスの開発組織です。Pepper、卓上型ロボット、スマートスピーカーを活用したサービスの企画から開発までを行っています。

それでは、まず岩本さんのこれまでのキャリアを教えてください。

私は、高専在学中に初めて研究活動を開始しました。その時はVRを専門にしていたのですが、大学院進学時から現在も続けている”HCI領域における対面コミュニケーション拡張”をテーマに複数の研究を行っています。卒業後も民間企業の研究所に所属しながらHCI領域の研究を続け、論文を書き続けてきました。論文を書くのが好きなのですが、より大きな実験を行い社会的インパクトが強いプロジェクトを進めたくなりサイバーエージェントに転職しました。現在はロボットサービス事業部に所属し、ロボット/スマートスピーカの事業とHCIの研究をしています。

現在の研究テーマと働き方を教えてください。

現在は対面状態のコミュニケーション拡張をテーマに複数のプロジェクトを主導しています。電話やメールにより人類は場所や時間に依存しないコミュニケーションが可能になりました。今後テレプレゼンス技術が発達することでより遠隔地でも距離を感じさせないコミュニケーションが実現するでしょう。一方で、目の前にいる人とのコミュニケーションは原始時代から大きくは変わっていないと感じており、対面状態での情報伝達に特化したシステムの研究を行なっています。その研究にあたってはロボットやデバイスを自作することが多く、アウトプットは学会が中心になっています。また、大阪大学の研究プロジェクトにも参加し、ロボット接客の研究にも関わっています。

私の働き方の特徴は事業部所属の研究者であることが挙げられます。事業部の目標達成のために売り上げを作らなければなりません。そのため、研究の知識や技術をプロダクトに落とし込んでいます。サービス設計やクライアントのニーズを汲み取る作業は研究と異なるため考え方を切り替える必要があり大変ですが、社会実装することに魅力があります。

事業と近い距離で開発を行うことへの関心はどのような背景があるのでしょうか。

私が取り組んできたコミュニケーションに関するHCI研究の課題として、「実験の被験者集め」がありました。実験条件に制約があることが多いため、多くの被験者を集めることが難しく、とても歯痒い思いをしていました。そこでより多くの人たちのデータを集めるためには研究を社会実装することだと考え始め、サービスを作り上げることに興味を持ち始めたことが背景です。現在やっている研究で「ロボットを用いた婚活パーティ」があるのですが、それが実現するととても楽しいと思いませんか?

「ロボットを用いた婚活パーティ」について詳しく教えてください。

この研究は、人間が会話をする必要がない(コミュニケーション能力に依存しない)婚活パーティを作るのを目的にしています。婚活パーティは短い時間に複数の人と話すため、会話が単調になり誰と何を話したが判別しにくくなります。そこで参加者全員にロボットを配り、事前に回答するプロフィールを元にロボットが全ての会話を代行する研究を行なっています。そうすることで会話が詰まった時に代行してくれるだけでなく、ロボット同士の会話を話題にして対面している参加者同士が会話を広げることができます。

事業開発をしながらCHIへ論文を投稿されていましたが、研究開発はどのように進められたのでしょうか。

日によって変化はありますが基本的に研究と事業部のタスクは同率にするように調整しています。それは研究が事業部に、事業部のタスクが互いに研究に活きてくるからです。社内制度の一つで研究者・エンジニア・ビジネスメンバーが垣根無く参加できるゼミ制度があります。私が主催するHCI(Human Computer Interaction)ゼミではコミュニケーションを拡張する研究を複数行なっています。今回は実験と論文執筆が短いスパンで行ったためHCIゼミのメンバーと共同で書き上げました。

ゼミでは様々な事業部からHCIに興味を持つメンバーが集まっているため、議論も楽しく会話からプロジェクトのアイデアが出ることも珍しくありません。

現在の研究開発環境について教えてください。

現在は研究室で研究を進めています。周りが研究者で構成されている部屋なので研究する環境はいいと思います。会社としても研究への投資に積極的なので、必要な物は説明をしっかり行えば利用することができます。現在はロボットが4台、スマートスピーカー3台などがあります。また電子工作をするスペースもあるので、簡単なものならすぐに開発をスタートさせられます。

最後に、今後取り組んでいきたいことについて教えて下さい。

社会実装する経験を積むことができたので、今構想している研究を社会に出してビジネスとして成立させていきたいです。

岩本さん、ありがとうございました。

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