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サイバーエージェント ベストエンジニアインタビュー (AI Messenger 横道 稔)


皆さんこんにちは、サイバーエージェント、アドテクスタジオの伊藤(@wildtiger0713)です。

 

4/7(金)に行われたサイバーエージェントグループ総会 2017にてアドテクスタジオから2名の「ベストエンジニア賞」受賞者が生まれました!

 

前回はその受賞者の1名、AI Lab 馬場 惇(ばばじゅん)のインタビュー(https://cyberagent.ai/techblog/archives/2752)を紹介させて頂きましたが、今回はもう1人の受賞者、人工知能を活用したチャットプラットフォームサービス「AI Messenger(https://www.ai-messenger.jp/ )」でプロダクトマネージャーを務める横道 稔にインタビューを行い、頭の中を聞きだしたいと思います!(インタビュアー:サイバーエージェントグループ総会 2016 ベストエンジニア賞受賞 長谷川 誠)

 

 

 

— ベストエンジニア賞おめでとうございます。横道さんが今やっている業務、ミッションを教えてください。

今、AI Messengerというプロダクトに所属しています。役割としては、スクラムの定義でいうところの、いわゆる「プロダクトオーナー」です。

 

 

 

— 横道さんというと「プロダクトマネージャー」という肩書が浮かびますが、それとは異なるのですか?

僕はいつも自分の役割を聞かれた時に「スクラムプロダクトオーナー」と答え、自分からプロダクトマネージャーですとは言わないように気をつけているんです。世にいうプロダクトマネージャーの見るべき範囲はUpstream、Downstreamを含めたプロダクトライフサイクルの全てになりますが、僕は自分一人でその全てを見れている訳ではないので。僕がやっているのは、スクラムガイドの中で「プロダクトの価値の最大化」と定義されているプロダクトオーナーの役割の範囲で、さらにその中でも文字通り以下の最低限のことしかできていないという思いあって、事業責任や市場分析、マーケティングなど、あまりにやりきれていないことが多いんです。なので自分に足りない部分のスキルを持つ他の方々と共にプロダクトオーナーチームを組み、彼らの経験や情報を活用しながら、それらを集約してソフトウェアに落とし込むところのハブのような役割を自分が行っているといった感じです。

 

 

 

— プロダクトマネージャーの役割の定義は各企業ごとにマチマチだという話を耳にしますが、横道さんの中では明確な定義を持たれているのですね。そのような中で「プロダクトマネージャー」と名乗るのをあえて避けられているのは何かやり難さなどがあるのですか?

まだまだ見習いなので、単にマサカリが怖いという感じです(笑)

 

 

— あー、SRE(Site Reliability Engineering)の扱われかたとも似ていますね(笑)

そうですね、SREも本来のSREの定義とやっていることが違うけどSREと言ってしまうみたいなところありますね(笑) なので外部に向けてはあくまでスクラムプロダクトオーナーと名乗っています。ただ、社内外に対して役割の存在を広めたい思いがあるので、プロダクトマネージャーと名乗ることもあります。SREもそういった側面があるかもしれないですね。今はユーザー体験や機能面にフォーカスして意思決定しているという感じですが、本来目指すべきは事業責任までをきちんと負ったプロダクトマネージャーだと思っていますので。

 

 

 

— 横道さんは「開発責任者」(※アドテクスタジオでは、プロダクトごとに開発責任者と呼ばれる役割がある)でもあるのですよね?

はい、スクラムの中で定義されている役割ではないですが、チームメンバーのミッション設定や評価、コンディションをケアしながらチームビルディングなどを行う、いわゆる「エンジニアリングマネージャー」としての役割も担っています。

 

 

 

— チームを率いるための根底にはメンバーからの信頼感、人間関係の築き方などが大事かと思いますが、信頼関係を作り上げていく上で横道さんが大切にしていることはありますか?

僕は何よりも対話が大事だと思います。一対一できちんと相手の考えていること、大切にしていることを真剣に考えて話すことは常に心がけています。ただそのベースとして自分の役割をきちんと全うしていることも大事です。そうでないと話はしてくれないですから(笑)

 

 

 

— トップダウン型のリーダーと、支援型のサーバントリーダーの話があるかと思いますが、横道さん自身はどちらのタイプだと思われますか?

自分はサーバントリーダー型だと思いますが、みんなのやりたがらないことをしてあげるという意味での奉仕型ではなく、やるべきことを引き出して動機づけをしていくようなコーチング型のリーダーを目指しています。言葉で誤認されがちですが、「サーバントリーダー」は本来そういうものですよね。トップダウンを使わなければならないこともありますが、自分は割と苦手で、弱みだと思っています。ただその場合も感情を切り離すことは大事だと思っています。仕事上で自分は怒ったりすることはない(はず)なので(笑) 何かが起こった時ほど一対一で話すことを心がけています。

 

 

 

— マネージメントにおける感情として「怒り」が有効であることはあるのでしょうか?

自分の中ではマネージメントにおいて「怒り」を伴って利のあることはないと思っています。怒るのではなく、率直に意見を言ったり指摘したりすることが大切だと思っています。確かにそういった怒られたり感情的な言葉を受けてやる気が起こるメンバーもいるかもしれませんが、少なくとも自分が受け手だったらそこに持続性は伴わないです。自分のマネジメントスタイルとしては、自分がされて嬉しいことを行い、されて嫌なことはしないというのを一つの指標にしています。それは多面的でないとも言えるかもしれませんが、人の気持ちはわからないので(笑)

 

 

 

— では今度は技術面の話をきかせてください。技術的な意思決定にもとても勇気がいるかと思いますが、AI Messengerには技術選定の方針などはあるのですか?

僕は議論に参加したり後から共有をもらったりはしますが、技術的な判断はAI Messengerのテックリードである大野くん(大野 裕太)に最終的な意思決定を委ねています。ただ技術的な判断をしていく上で大事にしてほしい価値基準は伝えています。僕はリーンソフトウェア開発が大切だと思うので、作ったものは近い将来潰す前提くらいの気持ちでいてほしい。一度決断したものでも後から何もかも変わる可能性もあります。特にチャットボットのような新しい事業をやっているとそういったことは常に起こり得ますので、最初はベタ実装でも構わないので、技術的負債を管理しながらそれを投資と捉えてやります、という方針は常に伝えています。僕もエンジニアなのでよくわかりますし、AI Messengerのエンジニアは皆非常に設計力、技術力が高いので、念頭に置いておかないとつい最初から過度に時間をかけてきれいなコード、アーキテクチャで作ろうとしてしまいがちですからね。

 

 

 

— なるほどです。技術選定において事業スピード重視でなるべくリスクや作りものを減らして枯れた技術の利用を促進していく方針と、エンジニアの知的好奇心を満たすために新しい技術に積極的にチャレンジしていく方針があると思うのですが、その辺りのバランスについては横道さんなりの考えなどはあるのですか?

エンジニアメンバーの皆が優秀なのもあって、僕は割と無責任に「両方が大事だ」と言っています(笑) 新しい技術は採用して欲しい。なぜかというと僕は極論を言うとプロダクトは人が全てだと思っています。プロダクトの技術に優秀なエンジニアにどれだけ興味を持ってもらえるかはとても大事です。フルGCPというのはある意味チャレンジでやりましたし、アーキテクチャも今でも変えていかなければいけないところはたくさん残っていますが、魅力のないものだけは避けて欲しいということは伝えています。

 

 

 

— ありがとうございます。では今度はAI Messengerがプロダクトとして目指しているビジョンを教えてもらえますか?

AI Messengerとしては、まずはカスタマーサポートの領域をやっていきます。今は電話やメールを労働集約型でコストをかけてやっていることをAIチャットボットに部分的にシフトしていくことで人間が全てを行う必要がなくなり、人間はAIがまだ対応できないホスピタリティなどの部分に注力してより質の高いサービスを提供していく、そのようなカスタマーサポートの世界観を提供していくことを目指しています。我々はAIだけでなくDMPなどのテクノロジーも持っていますので、そういった技術を駆使して、より個々人にパーソナライズされた1to1なカスタマーサポートを提供していきます。

 

 

 

— いろいろとお話をお聞きしてきましたが、今回横道さんがベストエンジニア賞に選ばれた一番の文脈というのはどの部分だったのでしょう?

「エンジニアの可能性を広げた」と表彰コメントを頂きましたので、AI Messengerの立ち上げの中で、できるだけビジネス側に境界を越えようとしたことかなと思います。また、社内カンファレンスでのPMセッション、PMカンファレンスの実行委員、PM文脈でのデブサミ公式セッションでの登壇など、内部だけでなく特に外部での発信活動の部分も評価されたと思っています。僕自身はそういった活動は完全に自由にやらせてもらっていますが、表彰は組織メッセージでもあると思っているので、そういった働き方や貢献のしかたが組織からも求められている、ということだと受けとめています。一エンジニアとして、一つのロールだけでやっていても成果のレバレッジには限界がありますし、自分の役割のきちんとこなした上で、その境界を超える領域に積極的に出ていくという働きかたは意識しています。チームメンバーに対しても同じことを期待しています。ただ、そこで大事なのはきちんとデフォルトの線を引くこと。最低限の役割や期待値を合意することがとても大事です。本来やるべきミッションを果たした上で、積極的にその範囲から外に出ていくことが大事だと考えています。

 

 

 

— ありがとうございます。最後になりましたが、今後、横道さんが目指していきたいエンジニアとしての方向性を教えてください。

自分で手を動かすエンジニアリングを完全にしないというわけではありませんが、技術力を極めていく方向で強みを出していくのではなく、任天堂の岩田社長の「好きなことより得意なことをやりなさい」という言葉が好きで、組織や事業の為に自分が一番レバレッジが効くところで貢献していきたいと思っています。今はエンジニアリングマネジメントが比較的得意であることが分かってきたので、その部分は今後も確実に伸ばしていきたい分野です。ただ、自分の可能性を狭めずにいたいなとは思います。プロダクトや事業を作っていくところは自分としてはまだチャレンジして模索している段階ですが、常にいろんな可能性を模索しながら自らのキャリアを作り上げていけたらと思っています。自分が関与した物の成果や、それに関わる人たちが幸せになれることが自分のモチベーションの源泉なので、その軸がぶれない範囲でこれからもいろいろなことにチャレンジしていこうと思います。

 

 

 

 

今回、ベストエンジニア賞をきっかけに2人のエンジニアにスポットを当てて話を聞いてみましたが、普段なかなか聞けない熱い思いが聞き出せたのではないかと思います。今後もいろいろな視点からアドテクスタジオで活躍するエンジニアにスポットを当てて声を聞きだしていければと思います。

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