Blog

企業研究所による研究カンファレンスCCSE2020開催レポート


CCSEとは

AI Labの岩本です。CCSEという研究カンファレンスを設立し、現在まで運営委員長を務めています。これからイベントを開く方の参考になればと思い今年の開催報告をします。CCSEは「企業研究に特化したカンファレンス」です。今年で3回目の実施になり、聴講者を合わせると500名以上の方々にご参加いただける中〜大規模学会相当の規模に成長しました。CCSEでは議論することを積極的に推奨しており、毎年様々な施策を準備し、研究者同士や聴講者との議論機会を作り続けてきました。
このブログでは運営方法や施策の一部について紹介します。※過去の様子は2019年の様子を撮影したムービをご覧ください。

実施経緯

民間研究組織の研究の多くは学会では発表がされていませんでした。理由は各社により様々ですが、主に「自社の研究を発表することで独自性が薄まる」、「学術的新規性/優位性が弱いため発表する場として適切ではない」が多いのではないかと考えています。そのため民間企業に所属する研究者の多くは、他組織と議論する機会が学術組織に所属する研究者と比べて少ないと思われます。また発表機会が少ないと、研究の発展に影響があり得るだけではなく、これから研究者としてキャリアを考えている方々に企業研究所の存在を知ってもらえずお互いに大きな機会損失になり得ると危惧しています。そしてCCSEは「民間企業同士で議論する場を作る」、「多くの人たちに研究を知ってもらう」を作り出すために様々な企業の方々と共に実施され続けてきました。

主な運営はサイバーエージェントが引き受けておりますが、毎年各社から研究者の方々に委員としてご参加いただき、企画やアドバイスをいただいています。個人的にこの仕組みがとても良く、「ここはXXXXするともっと良くなるんじゃないか?」、「参加者に○○○を案内するとスムーズになるんじゃないか?」という自分たちだけでは気が付けなかった点に関してたくさん指摘をいただけました。また、運営委員としてではなく、「この企業さんも興味あるそうです!」、「今年も合同セッションやるんですか?興味あります」などたくさんの方々にCCSEを良くするためのご提案をいただけ、学会のようにたくさんの組織によって毎年運営がされています。

CCSE2020概要

CCSE2020では昨今の状況を考慮し、完全オンラインで実施しました。オンラインカンファレンスをこの一年体験し、「発表している感覚が薄れる」、「質疑が起きにくい」などの課題を感じていたので、それらを解決するための試作を行いました。 公式サイト

登壇企業と参加者数

今年はオンラインのため登壇にご興味をお持ちになる企業が少ないのではないかと不安だったのですが、最終的には登壇:15社30名以上、聴講者450名以上の申し込みいただきとても賑やかなカンファレンスになりました。そして発表テーマも、広く機械学習やロボットやVRなどインタラクション系の研究も目立ちました。

CCSE2020Presenters

発表形態

2020は完全オンラインで12/11に開催し、複数の発表・議論をする機会を設けました。

  • 口頭発表(質疑込み30分) 一般的なプレゼンテーション
  • 合同セッション(質疑込み60分) 複数企業が集まり1つのテーマに対して議論する
  • 企業ブース(開催中常設コアタイムあり) 協賛企業を中心に自由に発表できるオンラインブースを設置
  • ask the speaekers(休憩中20分程度) 登壇した発表者と直接質問ができるブース
  • 基調講演(質疑込み60分) 石黒浩氏による企業研究とコラボレーションの価値についてのご発表者

発表はどれも非常に面白く、見ているだけでワクワクしました(タイムテーブルでタイトルを確認できます。)。合同セッションでは、企業の研究者が悩むであろう「研究のビジネス化」や「成果を作り出す文化や組織作り」、「研究者の評価と昇給」など普段はなかなか聞く機会がない、議論を聞くことができました。
そして今回、質疑を活性化させるために「コメント研究者」と「OBSを用いたリアルタイム合成」を実施しました。コメント研究者とは各口頭発表に2名配置し、発表に対して質疑を行う役割です。またOBSを用いたリアルタイム合成は、下の図のように発表中に複数名をスライド、zoomチャットを同時に表示しました。

presentation

発表者はzoomとmeetを使用するだけで複数人が同会場にいるような方式な映像を発信することができました。システム構成を紹介すると、1つの発表につき3~4台のPCを用いて、「発表者取り込み」、「シーンスイッチ/ミックス」、「zoomで配信」と少し複雑に見えますが、1つ1つはシンプルです。配信に使用したツールは合成にNDI(Network Device Interface)とOBS(Open Broadcaster Software)を配信にzoomとgoole meetの両方を同時に使用しました。

これを実現するために発表者全員に、zoomのバーチャル背景を緑一色に変更してもらいます。そしてgoogle meetで指定のプレゼンを共有してもらい、スライド送りをしてもらいました。運営側は、zoomの映像の緑部分をOBSで切り抜き、指定した場所に発表者を配置します。そしてmeetの映像を切り抜き、貼り付けます。もう少し台数が減らせられると思うのですが、配信に影響を与えないように複数のPCに分けて、有線LANで安定して高速通信ができる環境で実施しました。

description

次にシーンの切り替えや、人の配置、必要に応じて、発表者等にアナウンスをする担当の人たちが必要になってきます。これは前日から社内の人事/広報の皆さんがご協力してくれ、スムーズな運営ができました。毎年本当にありがとうございます。

この2つの取り組みは概ね好評で

  • これまでのオンラインカンファレンスで一番盛り上がった
  • 臨場感があった
  • コメントはする方もやられる方も楽しかった

とコメントをもらえました。
全てがうまく行ったわけでもなく、zoomからオンラインブースへの移動に課題が残りました。しかし、今回の経験によりオンラインカンファレンスを運営する際の知見を得られることができました。アーカイブの公開は準備出来次第行いますので、公式twitterをフォローしてお待ちください!

Author

アバター
iwamoto