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博士課程向けリサーチインターンシップに参加してみて
クリエイティブチーム所属の下田です。
AI Labでは現在博士課程後期向けの冬季インターンシップを募集中ですが、今回のブログではAI Labにおける博士後期課程向けのインターンシップについて自分の経験を交えてどういったものになっているかご紹介したいと思います。
インターンシップ参加の経緯
自分がインターンに参加した経緯として、もともとAI LabについてはMIRUの発表や企業ブースの紹介で気になっていたのですが、2019年の6月ごろに開催されていたCVPR2019のWorkshopに参加して聴講をしていた際に直接声をかけてもらったというきっかけがありました。それから正式にインターンシップに応募して10月〜12月の間、冬季のインターンシップに参加しました。
インターンシップに参加してみて
インターンシップではCroppingについての研究はどうですかという提案をしてもらいました。画像からサムネイルに適しているような領域を推定するタスクです。自分の大学での研究と重なる領域が多くあったのと事業貢献につながりそうだなと感じ、提案を引き受けてCroppingの研究について取り組むことにしました。
研究はまずサーベイするところから始まって、ゴールとして既存のCropping手法を広告画像に適用する際に起こっている問題に対処してほしいという部分以外は基本的に自由な形式でした。インターンの際はパッと思いついたことをメンターの山口さんに相談して、これどうですかという話をしながら方向性を模索しながら進めました。自分は割と思いつきで後先考えずに話をしたり手を動かしてから考えてしまうタイプですが、そのまま進めて良さそうなところ、軌道修正した方が良さそうなところについての指摘などメンターの山口さんに柔軟に対応してもらえました。
インターンでは最終的にインタラクティブなCroppingシステムを作りました。Croppingスコア、Saliencyスコア、クリック率のスコアと複数の指標を作成して、スライドバーでこれらを調整しながらインタラクティブにCroppingを行えるというものです。Cropの縦横比、簡単なレイアウト、インスタンスの指定にも対応させて結構機能は充実していたかなと思います。学術的に大きな新規性をインターンの期間で生み出すには研究計画が出来上がっているものを一気に遂行するくらいでないとかなり難易度が高いと思っていたので今回の研究は手探りで進めたことを考えると結構よかったかなと思っています。
研究内容についてはデモ論文としてどこかに投稿しようと考えていたのですが、現在の国際情勢の関係からデモ発表がしづらくなってしまいました…。そこに関しては残念なのですが、入社した後自分が作成したシステムの一部が事業で使われているらしいので取り組んでよかったかなと思っています。
インターンシップに参加する前後の印象の変化としては、環境について大学と近いところがあるなと感じるようになったというのがあります。オフィスは立派なビルで少し驚きましたが、裁量労働制で出社する時間が全員バラバラであったり、定期的に論文の読み会があるのは研究室と似ている気がします。
インターンシップを経験してからの入社
自分はインターンシップ後に、サイバーエージェントに入社させていただきました。
入社の決め手としては、AI Labでは事業貢献と学術貢献両方について取り組めそうだなと感じたという部分があります。
自分が大学院修士課程で就活するかしないかという時期だった頃は、研究はお金にならない、会社では違う研究内容、国際会議に論文が通っているかどうかの評価はおまけ程度という話をよく耳にしていて、博士課程に行くのはアカデミアに残る人だというのが通説でした。自分はその頃そこそこいい成果が出ていて画像認識はこれから需要が大きくなっていくんじゃないかという期待があったので、博士課程に進学しましたが、研究の社会における需要はなんとかならないものかというのはよく考えていました。もちろん、事業と学術の貢献が一致しないことは常に起こり得ることで、これが難しい課題であるのは明らかですが、海外のいくつかの企業はこの問題にしっかり取り組んで大きな成果を出しているように見えます。現在、社会における画像認識の需要はそこそこ生じていて、研究で事業に貢献するとっかかりは十分あるように思います。こういった機会というのは貴重であると思うので、日本の社会における研究の立ち位置が変化する可能性に向けてなんらかの形で貢献できればと考えていました。
自分としてはこういった思惑があったわけですが、インターンシップはサイバーエージェントという会社について詳しく知る機会としてとても有益なものでした。例えば、事業部と研究部署の距離が近く、研究成果をプロダクトへ還元するという点で大きなアドバンテージがあるという点であったり、AI Labには多種多様な研究分野や技術について造詣が深い方々が集まっていて知見を共有可能であることも確認できました。くわえて、自分が会社について深く知れるということのほかに、実際に手を動かす速さや、どういった考え方で研究を進めるかなど論文や言葉では主張しづらい研究への取り組み方をみてもらえる機会としてとても有益なものだったように思います。
入社前後のイメージのギャップ
入社前後のイメージのギャップとしては、特許の申請が基本的に必要なかったり、知財に関連する論文発表についての制約がほぼないことに少し驚きました。企業では論文発表においても自社の許可を取るために労力が必要で大変という話を伺うことが度々ありましたが、今の所論文の投稿や学会参加などの手続きは大学の頃よりも楽なように感じています。こういった論文発表における手続きをなるべく減らそうという気遣いはありがたいです。それと、リモートワークが9月現在も続いているのですが、縛りが特になく、大学の頃にSSHで作業していたのと同じような感覚で作業できていて、これくらい自由にやってもいいんだなという感じです。
入社後現在の取り組みについて
入社してからの自分の業務は、ざっくりいうと広告画像におけるテキストに関係する情報の抽出についての研究です。具体的には広告画像に適したOCRや広告画像のテキストのエフェクトについての分析を現在行っています。特に、これらの詳細なデータはパブリックに公開されているものがないので、生成データを元にした学習に取り組んでいます。
自分は大学では弱教師あり学習という分野の研究を行っていて、限られたデータから学習を行うという部分に大きな興味があります。特に、汎用的な弱教師あり学習手法と弱教師あり学習とマルチタスクの組み合わせについて色々考えています。この問題は一朝一夕には成果が出ないと思っていて、難しい問題の研究に時間が必要というのは事業貢献における弱点の一つでもあり、事業貢献と学術貢献の重複を作っていく上でしっかり考慮する必要がある要素だと思っています。こういった研究にも腰を据えて取り組む事ができるのはAI Labの良いところだと感じている部分です。
個人的には、大きなゴールにおける中間のアウトプットをしっかりと作ってこれを事業貢献につなげていくのが一つのアプローチだと思っています。現在は、事業への貢献に繋がるような目的の研究を行いつつ、自分が考えている長期的なゴールに向けて知見が溜まるような取り組みができていると思います。
また、この中間のアウトプットで学術貢献も同時に作らないといけないのでなかなか難しいですが、今の所そこそこうまいことやれているのではないかと思っています。事業貢献と学術貢献は必ずしも重複しないので、意識しながらやらなければどちらかに偏ってしまうと思いますがなんとかうまいことやっていきたいと思います。また、現在はAI Labに所属して一年目ですが九州大学の内田教授の研究室との産学連携、共同研究についても携わらせていただいています。研究が事業に貢献できるように大学の先生方と協力できるとより課題の解決に近づけると思うので、こういったところでも貢献できたらと思います。余談ですが、個人的には学生の頃存じていた先生やその研究室の学生の方々と密に議論できる機会というのは新鮮で結構楽しめています。
長くなってしまいましたが、インターンシップはとてもいい機会でAI Labは学術貢献と事業貢献両方頑張れるところです。現在、AI Labではインターンシップの募集を受け付けているとの事なのでぜひ冬季インターンシップご応募検討ください!
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