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【採択論文紹介】Playful Recommendation: Sales Promotion that Robots Stimulate Pleasant Feelings instead of Product Explanation


AI Lab接客対話グループの岩本です。接客対話グループはHuman Agent Interaction、Human Computer Interactionを中心に研究を行なっています。今回は、IEEE Robotics and Automation Lettersの同時投稿オプションでIROS2022にも採択された論文Playful Recommendationに関する論文を紹介します。

論文名:Playful Recommendation: Sales Promotion that Robots Stimulate Pleasant Feelings instead of Product Explanation

ブログ概要:商品情報をユーザに提示しない推薦方法を提案しました。二度の実店舗での実験では売上が最大7倍まで上昇しました。これまでのロボットの推薦と比較し、商品やシチュエーションごとにシナリオやジェスチャを詳細に変更する必要が無く、汎用的な推薦方法になることが期待されます。

 

ロボットによる店舗内販促

小売店舗などには非常に多くの商品が陳列されています。販売側は複数の中から自社の製品やおすすめの商品をユーザに知ってもらうために様々な広告を活用しています。また購買の半数以上が非計画購買[1]と報告もされており、多くの人々は明確に買う物を決定し店舗に来ているわけではありません。そのため店舗内での情報提示が購買行動に大きく影響すると考えられます。

その中でも我々が注目しているロボットには

  • 集客に成功しやすい[2]
    • ユーザを惹きつける振る舞いが可能
  • 好みなどのヒアリングをしやすい[3]
    • 対話相手と認識されやすく、推薦に活用できる情報が得られる

などの特徴が報告され、従来の広告媒体と比較し「人を惹きつけ、満足度が得られる商品を販促する」媒体としての可能性があります。

ロボットをただ置けば集客やヒアリングに成功するわけではなく「腕をあげる・商品を指差すタイミング」、「関係性を構築する対話設計」などのインタラクションデザインが重要になってきます。このインタラクションデザインは、販促対象の商品や販売する場所やシチュエーションによって変更する必要があります。そのため突発的に販促商品を変更しようとしても対応がしきれない場合も存在します。今回は商品ごとにシナリオを変更することを課題とし、解決方法を提案しました。

快感情を刺激する推薦:Playful Recommendation

非計画購買の一種に衝動購買が含まれます。衝動購買は「快感情」のような「楽しさ」が発生要因と言われており、遊園地や商業施設などでも用いられるマーケティング手法です[4]。そこで我々は商品説明がなくても、ロボットがユーザの快感情を刺激することで購買意欲を高めることができる可能性があると考えました。快感情を刺激する行動は商品によって振る舞いを変えなくても良いことが多いため、実現することで商品によって変更する必要のないインタラクションになりえます。

我々はこのような推薦方法をPlayful Recommendation(以下PR)と名付け以下の条件が揃うことで効果を発揮すると考え、実験を実施しました。

  • ロボットと商品がユーザの注目するエリアに存在する
    • 商品に注目する時間が長くなることで、商品への興味や記憶に影響を与える[5]ため、商品とロボットを近い距離に設置する
  • ロボットは快感情を刺激する
    • ユーザが楽しんでもらえる振る舞いを行う
  • ロボットは商品の話を行わない
    • 商品説明がありふれていたり、楽しいものではなければ商品に関する話題も行わない。例外として商品自体がとても珍しく快感情を刺激する可能性があるなら説明しても良い

実験1:Playful Recommendationの効果検証

下記の仮説を検証するために、大型商業施設内にある雑貨店で実験を実施しました。

  1. PRは通常の陳列よりも効果的なシーンが存在する
  2. PRは商品説明する推薦方法より効果的なシーンが存在する

比較条件

・PR条件:快感情を刺激する方法としてダンスを採用しました。ダンスはロボットが行うエンタテインメントとして集客に成功した事例も多い振る舞いです。

・説明条件:商品詳細を説明します。今回説明用の動画を説明し、ロボットが説明をする際には動画を再生します。

・通常条件:ロボットがいない条件で販促します

使用ロボットと販促商品

今回の実験では自己推薦ロボット(Self Recommendation Robot-SRR)を使用しました。SRRは商品を動かすと同時に音声を再生することで、その商品が話しているかのように感じるロボットです。一般的なロボットは「ロボット」「商品」「ユーザ」の三者構造ですが、SRRは「ロボット/ 商品」「ユーザ」の二者構造になります。そのためPRを成功させるための要素の「商品とロボットを近い距離に設置する」がより強力になると考えられます。販促する商品は、実験期間中に実施されていたハロウィン限定商品を選びました。

 

 

PR動作イメージ

実験1:結果

結果の一部を抜粋します。

商品の販売率(販売数/通行人数)、ユーザの立ち止まり率(立ち止まり人数/通行人数)を算出しました。その結果

  • PRは、「説明をする推薦」および「通常時」よりも売り上げを有意に増加させた(※通常時の約7倍増加)(左図)

  • PRは、「説明をする推薦」および「通常時」よりお客様に立ち止まってもらえる(右図)

ユーザの様子を観察すると、ダンスをすることで「動画撮影をする」「一緒に踊る」など楽しんでいる様子が確認されました。またダンスをすることで、周りの人々を惹きつけることに成功し、他の条件よりも集客に成功しています。説明条件は同様のSRRを用いましたが、商品説明が始まることで離脱するユーザが目立ちました。SRRを用いることで通常状態よりも販促に有意に成功しており、特にPRは高い販売効果が確認され、H1,H2を支持する結果となりました。

実験2:Playful Recommendationを効果的に実施できるロボットの検証

実験2ではSRRと三者構造のロボットを用いてPRの効果を検証しました。実験はクリスマスシーズンに実施され、販促対象となった商品はクリスマスの限定商品です。

三者構造条件では通常の販促と同様にそばに商品を置くNearby条件と、SRRのように商品と同じ動きによって注目されられるHold条件の2つを準備しました。

実験2:結果

結果の一部を抜粋します。

商品の販売率(販売数/通行人数)、ユーザの立ち止まり率(立ち止まり人数/通行人数)を算出しました。その結果

  • 三条件間では販売率では有意差がなかったが、最も高い販売数と販売率だった(左図)

  • Nearbyは、他条件よりも高い立ちどめに成功した(右図)

 

販売数は実験期間外と比較すると各条件とも通常状態よりも高い結果となった。これはロボットの状態に限らずPRが販促に有効な可能性を示しています。特にSRRは商品と一体化しているので注目時間が伸びるため有効に働いたのではないかと考えられます。立ち止まり率に関してはNearbyが最も高い割合となりました。過去の実験でも一般的なロボットはSRRより高い集客効果がある[5]ことがわかっているため、同様の結果となりました。インタビュウではHoldは「商品を持ってアピールしていると広告という感じを強く感じる」という意見もあったことから、立ち止まり率がNearbyよりも低下した可能性があります。

最後に

商品情報を行わない推薦方法を提案しました。2つの実験を通して通常の販促よりも高い効果を上げることができました。

本ブログで紹介した結果や考察は一部のため、ご興味ある方はぜひ論文を読んでいただきたいです。論文内にはより詳細な手法や効果の確認範囲(リミテーション)、ロボット販促の倫理的考察などが含まれています。

 

引用文献

[1]C. J. West, “Results of two years of study into impulse buying,”J. Mar-keting, vol. 15, no. 3, pp. 362–363, 1951.

[2]I. Aaltonen, A. Arvola, P. Heikkilä, and H. Lammi, “Hello pepper, mayI tickle you?,” inProc. Companion ACM/IEEE Int. Conf. Hum.-RobotInteract., 2017, pp. 53–54.

[3]. Watanabe, K. Ogawa, and H. Ishiguro, “Can androids be salespeoplein the real world?,” inProc. 33rd Annu. ACM Conf. Extended Abstr. Hum.Factors Comput. Syst., 2015, pp. 781–788.

[4]D. W. Rook and R. J. Fisher, “Normative influences on impulsive buyingbehavior,”J. Consum. Res., vol. 22, no. 3, pp. 305–313, 1995.

[5]A. Fukayama, V. Pham, and T. Ohno, “Analysis of user’s gaze for usabilityassessment of anthropomorphic agents,” HIP2003, vol. 136, 2004.

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