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【採択論文紹介】Pseudo-eating behavior of service robot to improve the trustworthiness of product recommendations
AI Lab Interactive Agentチームの岡藤です。Interactive Agent チームはHuman-Agent Interaction, Human-Computer Interactionを中心に研究を行っています。今回は、ロボティクス分野の論文誌「Advanced Robotics」に採択された論文を紹介します。こちらの論文は、立命館大学 松村耕平先生との共同研究の成果になります。オープンアクセスにしていますので、ご興味のある方はぜひ一読ください。
論文名:Pseudo-eating behavior of service robot to improve the trustworthiness of product recommendations
著者:Yuki Okafuji, Takumi Ishikawa, Kohei Matsumura, Jun Baba, Junya Nakanishi
研究背景
我々は日常的に購買をしながら生活をしています。一般的に、購買をしている人は推薦によって商品を購入しやすくなることが知られており、ソーシャルロボット(対話ロボット)を使った商品推薦の研究も数多くされています (例 [1])。しかしながら、ソーシャルロボットによる商品推薦は、様々な問題を抱えていることが知られています。
例えば、商品推薦を行う時にロボットが「この商品は美味しいよ」と主観的な発言させてしまうことです。これは、ロボット自身は商品を食べられないことが自明であるため、ロボットの主観的発言に対して嘘っぽさが出てしまい、発言の信頼感が低下していまうことが問題となります [2]。ロボットの発言の信頼性が低下することで、お客さんは商品を購入してくれなくなるため、商品推薦する場面においては致命的となってしまいます。このようにロボットの主観的な発言を商品推薦の場面に活用できないとなると、販売促進の役割のロボットには制限がかかり、なかなか普及しにくい状況となります。
そこで本論文では、食品の商品推薦の場面において、ロボットの主観的発言の信頼性を向上させる手法を提案し、主観的発言を商品推薦に活用可能なことをオンラインサーベイとフィールド実験で示しました。
提案手法
本論文では、ロボットの主観的発言の信頼性を向上させる手法として、擬似的な食事行動を提案しました。擬似的な食事行動とは、下図に示すように、ロボットが手につけた商品のかけらを口元に近づけ、その際「ガブッ」という咀嚼音と一緒に「美味しいよ」と発言をする行動のことです。
ロボットの主観的発言の信頼性が向上しない原因の1つとして、リアリティの欠如が挙げられます [3]。そのため、ロボットの擬似的な食事体験を明示的に共有することで、ロボットの主観的発言の信頼性を向上させる可能性があります。お客さんはロボットが実際に食品を食べたフリを直接見ているので、ロボットからの「美味しい」という主観的発言が許容されることを狙っています。ロボットの主観的発言の信頼性が向上することで、商品推薦の効果を向上させることにも繋がり、販売促進の場面におけるソーシャルロボットの制限がなくなることも意味しています。
実際のロボットの擬似的な食事行動のシーン
実験内容
本論文では、2回のオンラインサーベイと、フィールド実験を行いました。オンラインサーベイからは、擬似的な食事行動を伴うことにより、ロボットの主観的発言の信頼性が向上し、購買意欲も向上することが示されました。オンラインサーベイの詳細な方法や結果についてはぜひ論文をご参照ください。
動画を見てアンケートに回答するという単純なオンラインサーベイ内では購買意欲が向上することが示されましたが、実際の店舗においても販売促進の効果があるのかは分かりません。そのため、大学内のベーカリーにロボットを設置して商品推薦をするフィールド実験を通して、提案手法の有効性を検証しました。
比較条件としては下記の3つを用いました。
- 食事推薦(Eating Recommendation): 提案手法。擬似的な食事行動が伴った主観的発言「美味しいよ!」を用いて商品を推薦する。
- エキスパート推薦(Expert Recommendation): 先行研究で有効性が示されている比較手法 [4]。商品の人気度合いや効能など、客観的な指標に基づいて推薦する。
- 組み合わせ推薦(Combination Recommendation):食事推薦とエキスパート推薦を組み合わせて、擬似的な食事行動と客観的な指標に基づいて推薦する。
実験は各条件5日ずつ実施して、それぞれの日で推薦する商品を変更しました。また、ロボットの推薦効果を比較するために、実験前後のそれぞれ10日分のデータも取得しました。平均来店人数、パン平均販売数、推薦商品平均販売数、推薦商品販売割合(推薦商品の販売数/全ての商品販売数)を評価指標としています。
実験結果・議論
実験結果を下記の表に示します。ロボットによる推薦効果を示す販売商品販売割合を統計検定した結果、実験前後合計期間と比較して、食事推薦とエキスパート推薦は高い推薦効果が示されました。つまりは、食事推薦ではロボットが主観的発言を用いて商品推薦をしているにも関わらず、先行研究で示されている手法と同等の推薦効果を持つことを示します。
一方で、組み合わせ推薦は実験前後期間よりは推薦商品販売割合が高いものの、他の2条件よりも減少する結果となりました。これは、オンラインサーベイで示されていたことですが、擬似的な食事行動「ガブッ」と客観的な発言(人気度合いなどの情報)を組み合わせることで、ロボットに対して違和感や嘘っぽい、といった印象を与えていることが起因していると考えられます。ロボットの行動に一貫性がなく、不自然さが含まれていたため、推薦能力が低下したと考えられます。
平均来店人数 [人] | パン平均販売数 [個] | 推薦商品平均販売数 [個] | 推薦商品販売割合 [%] | |
食事推薦 | 104.2 | 178.4 | 14.4 | 8.07 |
エキスパート推薦 | 112.4 | 195.4 | 15.6 | 7.98 |
組み合わせ推薦 | 102.2 | 167.0 | 12.8 | 7.66 |
実験前後合計(ロボットなし) | 100.4 | 177.3 | 8.8 | 4.94 |
おわりに
本論文では、ロボットの主観的発言の信頼性を向上し、推薦能力を向上させるために、擬似的な食事推薦という手法を提案しました。オンラインサーベイとフィールド実験の結果から、擬似的な食事推薦は先行研究と同等の推薦能力を持つことが示されたため、ロボットの表現が制限されない可能性を示しています。
今回はベーカリーにおける食品の推薦をすることを想定していたため、ユーザとロボットの体験共有をするために、擬似的な食事行動という手法を提案しました。しかしながら、食品以外の商品推薦の場合の体験共有の手法などは不明であり、今後は他の商品群の推薦場面なども検証していく必要があります。また組み合わせ推薦の結果で見られたように、日常生活における自然なロボットの行動生成はより一層重要な研究テーマとなりつつあり、大規模言語モデルと非言語動作の統合などが今後の課題としてあげられます。
本ブログで紹介した内容は一部であるため、ご興味のある方はぜひ論文(オープンアクセス)に目を通してみてください。論文内にはより詳細な手法や効果の確認範囲(リミテーション)、結果の考察などが含まれています。
最後に、我々のチームでは一緒に Human-Robot Interaction / Human-Computer Interaction の研究・開発を行っていただける研究者・エンジニアを募集しています。本ブログを見てご興味を持って頂けた方は是非一度カジュアルにお話させてください。よろしくお願いします。
参考文献
[1] S. Song, et al., Out for In!: Empirical Study on the Combination Power of Two Service Robots for Product Recommendation, In Proceedings of the 2023 ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction (HRI’23), pp. 408-416, 2023. doi: 10.1145/3568162.3577005
[2] J. Sytsma and E. Machery, Two conceptions of subjective experience, Philosophical Studies, vol. 151, pp. 29-327, 2010. doi: 10.1007/s11098-009-9439-x
[3] H. Cho, et al., Perceived Realism: Dimensions and Roles in Narrative Persuasion, Communication Research, vol. 41, no. 6, pp. 828-851, 2014. doi: 10.1177/0093650212450585
[4] S. Andrist, et al., Rhetorical robots: Making robots more effective speakers using linguistic cues of expertise, In Proceedings of the ACM.IEEE International Conference on Human-Robot Interaction (HRI’13), pp. 341-348, 2013. doi: 10.1109/HRI.2013.6483608.
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