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Interactive Agent チームによる研究紹介


サイバーエージェント AI Lab Interactive Agent チームの岩本です。 Interactive Agentチームによる研究を紹介します。

チーム概要

AI Labはサイバーエージェント内にある研究組織です。企業の組織ですが学会発表などの学術貢献も積極的に行っています。2016年に設立された比較的若い組織でありますが、AI研究をリードする企業として日本で4位、世界で49位として評価されています[1]。

AI Labには大きく分けて5つの研究領域を対象に複数のチームが存在し、約70名のリサーチサイエンティストが在籍しています。私が所属するInteractive Agentチームでは「ヒトが信頼したくなる対話エージェント」の開発を目指し、自律的な接客対話エージェントや遠隔操作ロボットを用いた遠隔接客、ユーザの行動を変えるインタラクションについての技術開発に挑戦しています。 チーム紹介ページ

 

 

メンバーはAI技術の社会実装を目指すリサーチエンジニアと、トップカンファレンスや事業に貢献する研究を行うリサーチサイエンティストが約10名所属しています。 複数のプロジェクトに従事していますが、今回のブログでは、販売促進を行うエージェントの研究に絞って紹介します。実際の店舗にエージェントを設置して販売促進をする研究は、世界的に見ても数少ない研究事例であり、実際のビジネス事情も考慮した研究を実施できていることは、我々のチームの特徴でもあり強みでもあります。

そしてもう一つの特徴として2017年から大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授と共に、ロボットなどの対話エージェントによる接客・広告技術の確立や科学的知見の獲得を目的とした共同研究に取り組んでいます。メンバーの多くが大阪大学に招聘研究員として参画し、大学内の研究室でも活動をしています。

販促とHCI

販売促進は、消費者の購買意欲を高めてもらうために行う活動のことを指します。身近なところでは、POP、デジタルサイネージ、クーポンやサンプル配布、実演販売、などが挙げられます。これらは「セール情報」「商品情報」などのメッセージを様々な形で伝達し、商品の良さをユーザに伝えます。 しかし、販促を行ったからと言って、ユーザに情報が適切に伝わるとは限りません。ユーザは頻繁に目にする広告やプロモーションコンテンツに対して無意識に無視する傾向があると言われています[2]。また気がついてもらうために派手な演出や大きな音を使ってしまうと、不快感を与えてしまうなどの問題や課題が存在します。

我々はこのような現実世界での販売促進の課題を解決するためにHCIやAIロボットなどの最新技術の研究を行っています。販促に関する実験のほとんどは営業している店舗内で実験し、リアルなデータを分析しています。これまでにスーパーマーケット、空港内のお土産屋、雑貨店、ECサイト、パン屋、コンビニエンスストア、高級寝具展などで実験を行い、その結果を論文などで報告しています。

 

研究紹介

Interactive Agentチームでは、主にロボットなどのエージェントを使って販促の実験を行っています。ロボットは人のような振る舞いを行うことで、対話相手と認識されやすく、他の広告媒体では難しかった対話や信頼関係を構築したり、注意を向けられたりしやすいといった特徴が確認されています。 これまでの研究では、ロボットによる販促がどのような特性を持ち、可能性があるかを明らかにしてきました。今回はその中から3つ概要を紹介します。

研究1

タイトル:Influence of collaborative customer service by service robots and clerks in bakery stores リンク

学会/論文誌名:Frontiers in Robotics and AI

概要:近年ではソーシャルロボットを用いた商品推薦の研究事例が増えており、効果の高いロボットの対話戦略や動作の調査がされています。一方で顧客への推薦能力は、ロボット自身の振る舞いだけでなく、店舗スタッフなどロボットの周囲にいる人々によっても影響を受ける可能性があります。そこで本研究では、ロボットと店舗スタッフが協業した接客をすることによって、社会的影響力が向上し、結果としてロボットによる推薦能力が向上する可能性を検証しました。店舗スタッフとの協業接客の有無による効果を検証するために、ベーカリーの2店舗で同時実験を実施しました。実験の結果、店舗スタッフとの協業接客により、ロボットの推薦能力が向上し、ロボットに対する顧客の印象や店舗体験が向上することが分かりました。

知見:店員と協業することで接客ロボットの効果は向上する

研究2

タイトル:Out for In!: Empirical Study on the Combination Power of Two Service Robots for Product Recommendationリンク

学会/論文誌名:HRI 2023

概要:本研究では、店内に1台のみ設置した状態より、複数台(店頭/店内2台)のロボットが連携を行い商品推薦を行うことで、より高い推薦効果が得られるかを調査しました。実験は大阪府内にあるベーカリーで実施され、下記の3条件を比較しました。

・ベースライン:ロボット設置無し
・条件①: 店内に1台のロボットを設置して商品推薦を行う
・条件②: 店内に1台のロボットを設置して商品推薦を行う上、店頭にもう1台のロボットを設置し、店内ロボットと連携して商品推薦を行う

→店頭のロボットは「店の中に僕の弟の〇〇(店内ロボットの名前)がいるよ!弟が商品にとても詳しいのでぜひ話に行ってみてね!」などと店内にロボットがいることを来店客に伝えるなどの連携を行いました。

その結果、条件②では、推薦商品の販売率(販売数/製造数)がベースラインと条件①より有意的に高いことがわかりました。一方、条件①はベースラインと統計的に有意な販売率の差は確認できませんでした。さらに、条件②では、「買い物客が店内ロボットを見た率」、「ロボットが推薦した商品を確認した率」、「推薦商品の購入率」が、条件①よりも有意的に高いことが分かりました。
これらの結果から、複数台(店頭店内2台)のロボットが連携し、店頭ロボットが紹介することで「来店客の店内ロボットへの注意」が高まり、商品推薦効果が向上することが確認できました。

知見:事前にロボットの存在と役割を伝えることで、そのロボットに対する注意が向上する

 

研究3

タイトル:Playful Recommendation: Sales Promotion That Robots Stimulate Pleasant Feelings Instead of Product Explanation リンク

学会/論文誌名:IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)

概要: 一般的にロボットによる商品推薦は、商品や店舗などの状況に応じてセリフや振る舞いを準備する必要があります。そのため、商品や状況が変化するたびにそれらを準備する必要があり、商品推薦の度に労力が必要になります。そこで本研究では、商品情報の代わりに快感情を刺激し、状況に依存しない販売促進方法である「Playful Recommendation」を提案しました。Playful Recommendation の効果を検証するために2度の実証実験を実施し、提案手法が有効であることが実験結果から示唆されました。また商品が自らを推薦する自己推薦ロボットでは販売数が 667% 増加するなどの有効性を確認しました。

知見:低関与商材を推薦する場合は快感情を刺激すると、購買意欲を高めることができる

インターン情報

AI Labでは2018年からリサーチインターンシップを開始しています。博士後期課程の学生を対象にしており、 2ヶ月間で研究計画・実装・実験を行いトップカンファレンスを目指します。 リモートでも参加可能なのでぜひご応募お待ちしています。 リンク

登壇情報

2023年12月22日(金) に東京大学でCCSEという民間企業による研究カンファレンスを開催します。今回は15社が登壇し、LLM、アルゴリズム、CV、ロボットなど様々なテーマの発表を行います。AI Labも登壇するのでみなさんぜひご参加ください。サイト

[1] AI Lab、2022年のAI研究をリードするトップ100企業にランクイン!日本4位、世界49位へ https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=28134

[2]Dalton, Nicholas S., Emily Collins, and Paul Marshall. “Display blindness? Looking again at the visibility of situated displays using eye-tracking.” Proceedings of the 33rd Annual ACM Conference on Human Factors in Computing Systems. 2015.

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